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医療法人と税の考え方

医業者の中には税制上の節税効果に比重を置いて、法人化の判断をする向きもあるようです。しかしながら、税制のみでは必ずしも正しい判断はできません。身近な例になりますが、これを結婚にたとえるとわかりやすいでしょう。婚姻は民法上の法制度ですが、多くの人は配偶者控除により税金が安くなるかどうかで結婚を決めているわけではありません。[1]

税制はあくまでも、医療法人の特質や問題となる場面・状況に着目して決められるものです。

たとえば、医療法人では原則として法人の有する医療施設や財産は相続税の対象とはなりません。これは個人の財産と法人の財産が区別されているからです。[2]

しかしながら、「持分の定めがある社団たる医療法人」というものでは、この区別が必ずしも徹底されていません。持分の払い戻しや法人解散時に持分に応じた残余財産の分配を受けることができるからです[3]。その結果、持分には財産性があると評価され(株式会社の株式と同じような扱いです)、相続税の課税対象となります[4]

また、個人開設の診療所ではその収益は事業所得として所得税の課税関係の下に処理されますが[5]、法人化すれば基本的には株式会社と同じ法人税制が適用され(医師は給与所得者として所得税が課税されます[6])、課税関係が変化します[7]。そして、医療法人の中でも救急医療確保事業を行うなど極めて公益性が高い「社会医療法人」については、その公益性ゆえに収益事業のみ課税(軽減税率)されます。[8]

このような扱いは、当該医療法人の特質・実態を税制面から評価し、税法等に反映させたものといえます。重要なことは、まず、このような特質・実態を備えた方がよいのかを判断することではないでしょうか。

さらに言えば、税制は景気や財政の状況その他政策的見地から頻繁に改正されるものです。現時点での税負担の試算が将来も不変である保証はありません。

税制は気になる一つの考慮要素ではありますが、それのみにとらわれると法制度本来の選択を誤る結果となります。私たちはとかく計算結果の数字に目を奪われてしまいがちです。それも重要であることは否定できませんが、法制度設計全体の考え方を踏まえた総合的な判断を心掛けたいものです。

脚注

  1. [1]婚姻について民法第4編第2章、配偶者控除・配偶者特別控除について所得税法83条1項2項,2条1項33号,28条3項1号かっこ書き,83条の2 など
  2. [2]相続税法2条1項2項 など
  3. [3]医療法附則[平成18年6月21日法律第84号]10条1項,2項,改正前医療法第56条1項 など。なお、医療法人の種類については別の機会に触れます。
  4. [4]相続税法2条1項2項,22条,財産評価基本通達第8章第1節 など
  5. [5]所得税法27条1項2項,同法施行令63条11号 など
  6. [6]所得税法28条1項2項3項4項 など
  7. [7]法人税法2条9号,4条1項本文 など
  8. [8]医療法42条の2,法人税法4条1項但し書き,2条6号,別表第2,2条13号,同法施行令5条1項29号チ など

【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。