通常は一体化して扱われることの多い「水道料金」と「下水道使用料」ですが、扱いが異なってくる場面があります。それは、未納となった際の回収方法や時効により債権が消滅する場面です。
下水は滞納処分ができるが、水道はできない
「下水道使用料」を支払わない場合、市町村は、地方税と同様に、未納者の財産を差押えるなどの滞納処分をすることができます[1]。公共下水道は市町村などの自治体だけが設置管理するものなので[2]、「下水道使用料」は公の債権として、租税と同様に強い効力が与えられているのです。大きな事業者などが未納の場合は、まじめに払っている人との公正のためにも滞納処分が必要となる場合があります。
これに対し、「水道料金」は滞納処分はできません。水道事業は民間も参入できることになっており[3]、水道料金は性質上、品物の売買代金と同じように給水契約にもとづく私債権にあたります。そこで、一般の債権回収手続きと同様に、裁判所による執行手続きによって強制的に回収することになります[4]。
水道の給水停止
「水道料金」では、支払わない場合に水の供給が止められる場合があります(給水停止)。水道料金は、いわば水道水の代金なので、代金を払わないのなら払ってくれるまでは品物を渡さないということです。[5]
水道は給水栓を閉じて供給を止めますが、下水道については、使用を止める処置は事実上不可能です。
時効は水道2年、下水5年
「下水道使用料」は公の債権として租税などと同じく5年間で時効消滅します[6]。債権は10年で時効消滅するのが原則ですが[7]、税などの公の債権は滞納処分ができるなど強い効力が認められているので10年も存続させる必要はないと考えられているのです。
「水道料金」は品物の売買代金と同じ民法上の債権なので2年間です[8]。物品売買は日常的に繰り返され、取引の証拠も残らない場合が多いのでさらに短期間の消滅時効とされているのです。
以上のように扱いが異なるのは、債権の性質が異なるからです。このように、自治体には性質の異なる様々な債権があります。そこで、料金等を支払う側の利便性と、自治体の行政効率(収納コストを下げたい、収納率の向上させたい)との観点から、いろいろな債権をどのように管理して行けば良いのかが問題になるのです。
脚注
- [1]地方自治法232条の3第3項,同法附則6条3号,地方税法331条(特に6項),373条(特に7項),国税徴収法第5章 など。滞納処分は、裁判所を通さずに自治体(徴収職員)が直接、未納者の財産を強制的に差押えて、それをお金に換えて、未納の使用料等に当てるという手続です。
- [2]下水道法3条1項 など
- [3]水道法6条1項2項
- [4]民事執行法22条,同法第2章第2節 など
- [5]水道法15条3項,民法533条。もっとも、水道は個人生活者にとってライフラインであり、またホテルや水道水を使った製造業者などにとっては業務自体の存亡につながることから、給水停止には慎重な判断が求められます。
- [6]地方自治法236条1項。この場合、時効消滅を潔しとしなくても一方的に消滅します(同条2項)。
- [7]民法167条1項
- [8]民法173条1項
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。