昨今は、インターネットの普及や商品配達・決済の手段が充実するなどの事情もあって、個人の事業者や一般市民がさまざまな取引活動を行なう場面が増えてきました。たとえば、実店舗や倉庫がなくても手軽にものを売り買いすることができるようになっています。また、このような状況も反映して、取引活動についての最も基本的なルールを定める民法(債権法)について約120年ぶりに抜本的に改正する動きも進んでいます。
そこで、契約を中心とする債権について、取引の各場面における法的問題や、契約書作成のポイント、電子取引の特殊性、などについて考えてゆきたいと思います。今回は、具体的な契約のはなしに入る前提として、ごく大まかですが、民法のアウトラインに触れます。[1]
民法の法社会モデル
民法は私法の一般法といわれています。人の経済活動と法とのかかわりについて、民法が想定する最も単純な場面は3つあります。1つは、「人とその所有するもの(物)との関係」。2つは、「人と人との取引の関係」。3つは、「人と、人や物に対する侵害者との関係」です。このうち1番目は所有権などのことで物権といいます。残る2つは債権です。[2]
債権とは
債権は特定の人に特定の行為(たとえばお金を払ってもらったり、商品を引き渡してもらうという行為)をさせる権利です。これは、最終的には国家の力によって強制できるもので、古くは人と人とをつなぐ法の鎖といわれていました。
原始社会は自給自足からはじまり、次第に余った生産物を交換するようになりましたので、当初は人のものに対する関係(物権)を保護することが重要でした。ところが「お金」が発明されて普及すると(貨幣経済)、お金の価値に置き換えることで、さまざまな取引活動が可能となり、債権が発達し重要な役割を果たすようになります。[3]
債権の発生原因
債権は上記2番目の「人と人との取引の関係」によって発生するのが典型です。取引によって契約が成立すると、両当事者の間に、相手に一定の行為を求めることができる権利が発生し(債権)、その裏返しに相手方は義務(債務)を負うことになるからです。
また、債権は上記3番目の「人と、人や物に対する侵害者との関係」との関係でも発生します。侵害者が人を傷つけたり他人のものを壊したときは、被害者は侵害者と見ず知らずの関係であっても、侵害者に対して損害の賠償を請求できるのです(不法行為)[4]。
脚注
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。