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債権(契約)の一生 その2 — 契約の成立と書面の意味

前回のコラムでは、債権を中心に民法の規定する財産関係のアウトラインをみました。今回からは、契約の具体的な過程を考えたいと思います。その場合に重要なことは、契約というものは、あるとき突然発生して突然消滅するのではなく、通常は段階を踏んで成立し、徐々に目的を達成して消滅するということです(店頭で日用品を買う場合のように、品物と代金をその場でやり取りして瞬時に終了する契約もありますが)。

契約の成立

「契約」が何かについては、いろいろな説明があるのですが、ここでは「約束であって、法律によってその履行が保護されているもの」[1]と理解しておきます。つまり「契約」といっても要は「約束」なのですが、あらゆる約束ごと一般ではなくて、その約束を守ることが究極的には国家の力により強制されうるものを指すのです。

この契約は、契約を結ぼうとする当時者間の意思の合致、すなわち合意によって成立すると考えられてきました。具体的には「申込み」(ある品物をいくらで売りましょう)とそれに対する「承諾」(おっしゃるとおり、その物をその値段で買いましょう)です。契約内容を守ることが強制されるのは、あくまでもそれがお互いの自由な意思に基づくからだ、というのは理解しやすいことだと思います[2]

契約を書面でする意味は

このように、契約は原則として合意によって成立しますので、必ずしも「契約書」という書面を作成する必要はありません。しかしながら、どのような合意をしたのかを書面でハッキリさせておけば、お互いに誤解を防ぐことができますし、万一後にトラブルになったときも合意内容を証明するのに便利です。また契約の中には、保証人となる契約などのように、法律上、特に書面で契約しなければ有効に成立しないと定められているものもあります[3]

ですから、取引内容が複雑な場合や、取引金額が大きい場合などは、契約書を作成することをお勧めします。

契約が成立する前について

ところで、事業を企画して商談・交渉を行なう場面のように、契約成立に先立つ段階であっても、契約の成立を信頼して相手の求めに応じてさまざまな準備等をしたにもかかわらず、その相手が一方的に商談を破棄したような場合には、それに要した出費分等を賠償しなければならない場合があります。[4]

また、契約に持ち込むためには相手に何を言っても許されるというわけではもちろんなく、契約の前提となる情報をきちんと提供し説明する義務があります。このような説明をきちんとしなかったり、事実と異なる表示をした場合には、後に契約が成立してもその効力が否定されたり、一定の責任が課される場合があります。[5]

脚注

  1. [1]星野英一「民法概論Ⅳ」(良書普及会、1986年)3頁
  2. [2]このような理解は、きちんとした合理的な判断ができる独立した個人が、お互いに対等な立場で取引活動などを行なう場合に、よく当てはまるといえます。「契約自由の原則」などともいわれます。
  3. [3]民法446条2項
  4. [4]最近のものとして、たとえば、東京高裁平成14年3月13日判決 など
  5. [5]最近のものとして、たとえば、東京高裁平成11年10月28日判決 など

【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。