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民泊ガイド民泊

民泊オーナーの特色を出すことも大切

**第4章 許可が下りなくても、あきらめないで!**

古民家の欄間を切り取って民泊の壁に貼ったオーナーは、おそらく純粋にビジネスだけの動機でやったわけではないと思います。マニアの人が自分のコレクションを見てもらって「珍しい」「おもしろい」「美しい」と評価してもらうことで得られる快感のようなものも、そこには企図されていたに違いありません。

それは純粋にビジネスの感覚から見れば少し合理的ではないことかもしれませんが、外国人を相手にする民泊事業においては、そのようなオーナーの遊び心のようなものが、意外に宿泊客に響くことが多いような気がします。

大きなホテルや旅館にパブリックな場の良さというものがあるとしたら、やはり民泊には、そのオーナーの個性が感じられるテイストがあることも大事ではないかと思います。それがかなりエキセントリックなもので、日本人なら引いてしまうような感覚であったとしても、外国人観光客には喜ばれるはずです。日本人に多い「奇妙で変な趣味なら、ただシンプルな宿でいい」という感覚とは、少しズレていると思います。

この「どのような民泊施設をつくるのか」という問題は、まだ物件も決まっていないようなスタート時点でじっくり考えておきたいところです。営業をスタートしたあとで、このようにしたかったと思いついても、かなりの制約やコストがかかります。

民泊の集客はAirbnbなどのサイトに任せておけばよい、という気軽さはメリットではあります。しかしそのなかで、やはり「どれだけお客さんを集められるか」ということは、民泊同士の競争なのです。そこで頑張れるかどうかは、民泊スターと時点のオーナーのコンセプトと工夫と、そして行動しかありません。

民泊ビジネス成功のために、集客はやはり考えなければいけない大きな課題です。

それは、ここまで述べてきたように近隣地域のお店との提携事業にすることができますし、あるいは「民泊ビジネスにプラスアルファの周辺ビジネス」として展開していくことも可能でしょう。

ここは大事なところなので、次の第3章でもう少し幅広い観点から眺めてみることにします。

競争が激化する京都民泊で頭一つ抜け出すために

民泊ビジネスの大きな魅力のひとつは、Airbnbを利用できる、という点にあります。

世界中に存在する「日本の京都に行ってみたい」と思っている一人一人に対して、簡単に自分が営業している民泊の魅力をアピールできるのです。旅館やホテルを始めるなら、まずお客さんを呼ぶための投資が必要ですが、そこが無料で済むのですから、これは事業スタートにおいて大きなアドバンテージとなります。

ただし、いま現在も京都の民泊施設は増え続けています。今後は、どのような施設でも民泊をつくってAirbnbに登録すれば成功する、というわけにはいかなくなることは間違いありません。そこで、やはり集客のための「差別化」が必要です。

集客の差別化は、ひとつには「お金をかける」という方法があります。これは民泊ビジネスをどのようにとらえて行うのかという、最初のコンセプトにも関わってきます。

しかし、ただお金をかければ集客が成功するかというと、そんなことはありません。そこに、事業者となるオーナーの工夫とアイデアが物を言うことになります。

大部分のオーナーは、民泊をビジネスとしてとらえるとしても「集客の部分にそれだけのお金はかけられない」というスタイルだと思います。そうであればなおさら、京都のこと、その地域や近隣のこと、そしてターゲットとする外国人旅行者のことをしっかり研究して、なんらかの仕掛けをつくっていくことがとても大切になって来ると思うのです。

行政書士である私は、民泊の許可申請手続きを代行する仕事を専門に行っている立場ですから、民泊ビジネスにおける集客の工夫やアイデアについては専門外です。もしかしたら、読者のみなさんのほうがご専門なのかもしれません。

ただし、たくさんの事業家のお客さんから相談を受けるなかで、また京都市のさまざまな事情について多少詳しい者として、私は考え方の基本や事例などをあげることができます。それをベースに、読者のみなさまに独自のもっとユニークなアイデアが生まれてくればと考えています。

前章の例と重複する部分もありますが、集客の工夫とそこから可能性が出てくる周辺ビジネスについて、ここで整理して挙げてみたいと思います。

外国人観光客の足の流れを読む

民泊を利用する外国人観光客の多くは、あまり綿密な計画を立ててやっては来ません。宿泊施設も決めないで来日する人さえ、少なくありません。

ただし、日本で何をやりたいか、何を見たいか、大雑把な予定や目的は必ずもっています。たとえば、羽田に着いたら東京周辺で民泊を探して泊まり、翌日は浅草や渋谷を歩いて夕食を食べてから、夜になったら新幹線で京都へ向かう、というような計画です。

ほとんどの外国人観光客は成田や羽田に到着するので、東京を日本観光の起点とするケースが多くなります。そして彼らの意識としては、前述のように東京の次がもう京都なのです。しかも、そのとき京都の宿を決めていなかったりする人も少なくない、というわけです。

そういう呑気な外国人を確実につかまえることができれば、新しくスタートする民泊の稼働率はぐんと上がるでしょう。

前述の品川で民泊をやっているご主人は、まさにそうした外国人観光客の流れを知って、そこから「京都でも民泊を始めようか」というアイデアを得たのです。次は京都へ行くというのにまだ宿も決めていない宿泊客に対して、京都にもある民泊を勧めれば、喜んで予約してくれるだろう、という思惑です。

同じような発想で、京都でも民泊をしてみようと相談に来た東京のオーナーが、ほかにも3組くらいありました。いま流行りの囲い込みの発想です。

すでに東京に民泊施設を持っているオーナーではなくても、東京にある外国人観光客に人気のスポットに自分の京都の民泊施設との存在をPRするチラシを置かせてもらう、おみやげ屋さんなどと何らかのかたちで提携して観光客の利便をはかる、というようなことは考えられると思います。

多くの外国人観光客は「ニッポン体験」を求めている

旅のおもしろさは、なんといっても非日常の体験でしょう。言葉も顔も違う人々が暮らす異国の地に降り立って、そこで自分の日常とはまったく違うことを見たり食べたり体験したりする、そこにエキサイティングな喜びを見いだすことができるのは旅の一つの醍醐味であるはずです。

とくに、日本を訪れる多くの外国人観光客は、「ニッポン体験」を期待してやって来ています。京都を訪れる理由の大部分が、そこにあるのではないかと思います。

大きな旅館やホテルではなく民泊ならば、そんな外国人観光客のお望みに沿ったサービスが可能です。むしろ外国人観光客は、民泊の「面白さ」を求めて、旅館やホテルではなく民泊を選択するのだと思います。

そのような決定的なニーズに、応えない手はありません。

まずいちばんオーソドックスな「食」に関してです。

民泊は普通は素泊まりで、食事は提供しません。しかしそこが狙い目です。外国人旅行者も、そのほうが都合がよいのです。京都の町で、そこで暮らす人々がいつも食べているものを体験してみたいからです。

食の楽しみは、海外旅行では欠かせないほど大切なものです。たとえ口に合わなくても「こんなものを食べているのか!」と面白がり、話のタネになるかもしれません。そういう体験を、彼らは大切したいのです。

一般的に人気なのはラーメン、寿司、天ぷらといったものです。京都といえば和食ですが、本格的な店はどこも高いので、もっと庶民的なところに流れていきます。安くて美味しい居酒屋などが自分の民泊施設のすぐ近くにあれば、それはとても喜ばれるでしょう。そのような店と提携して、部屋にチラシを置いて宣伝するかわりに割引券を発行させてもらう、などは簡単に考えられる戦略です。

京都の町家に、2階がゲストハウスで1階は飲食店というところがあります。それぞれ別の事業者の施設で、出入口などお客さんの動線もゲストハウスと飲食店では異なっているのですが、外国人観光客には両方とも評判がよいようです。

このようなケースで、外に出ないでそのまま飲食店に入れるような構造になっているなら、たとえば2階の宿泊客だけのために早朝から簡単な朝食がとれるような営業をしている、というような提携は可能でしょう。朝食はオプションにして別料金にしてもいいし、最初から「朝食込み」の宿泊料金に設定することもできます。

もしも飲食店事業の経験者であれば、民泊施設をスタートすると同時に、その近くに外国人観光客も視野に入れた飲食店をプロデュースしてしまう、ということも当然考えられます。それはさらに融通がきいて、効果的です。

外国人観光客の「口コミ力」はなかなか強いので、うまくいけば相乗効果が働いて両方とも繁盛すると思います。

着物の着付けサービス

外国人観光客が熱望する「京都でのニッポン体験」としては、着付けもなかなか根強い人気があります。きれいな着物を着せてもらって、写真館で記念撮影をするのです。

日本の着物は、さまざまな技法で彩られる美しい色柄が魅力です。女性にとって、美しい着物を着てお姫様のような写真を撮ってもらうことは日本旅行の一生の記念になるし、帰国してから家族や友人へのよい土産話にもなるのでしょう。

日本の女性にとって着物は卒業式や成人式で着る機会があるし、日本にいればいつでも着物を着ようと思えば着ることができるということで、ことさら「京都で着付け」ということにそこまでの価値を認めないと思います。しかし外国人にとっては、京都での着付け体験は格別なものなのです。

実際に、それを見込んで町の写真館が外国人観光客をターゲットに、着付けサービスをパックで提供していたり、旅行会社のオプション・サービスとして「着物を着て人力車に乗って2時間観光、その後写真撮影」などと銘打って売り出しています。

民泊を利用する外国人観光客は、前述のようにとくに十分に調べないで現地で情報を調達しようとする気楽な人たちが多いので、「着物を着てみたい」という気持ちはあってもどこで相談すればいいのかわからない、というケースは少なくないと思います。

民泊施設が着付け師の資格者やスタジオを持っているカメラマン(町の写真屋さん)と提携していれば、多くの宿泊客が利用するでしょう。「着物を着て何かをする、その写真を撮る」という状況のなかで、アイデアはいくつも浮かぶのではないでしょうか。

カメラに自信がある人、あるいは奥さんが資格を持っているというオーナーであれば、これも民泊ビジネスから敷衍する周辺ビジネスとして双方が成り立っていくかもしれません。これも要検討です。

情報インフラが整備されていない現状も狙い目

日本人が旅行の計画を立てると、たいていは綿密なスケジュールを考えます。宿から車の手配からオプション旅行から、すべて事前に予約を取っておいて、実際の旅行中には一つも頭を悩ませないでスムーズに動けるようにしておきたいのです。

それは合理的かもしれませんが、現地を見て、その臭いを嗅いで動物的なカンを発揮して行動するというようなワクワク感は得られません。現地の人との出会いなども、少なくなってしまうでしょう。外国人観光客はむしろ、そのような「行き当たりばったり」の旅がしたいのです。

とくに欧米からの一人旅というケースでは、旅をしながら地元の人やインターネットなどから現地の情報を得て旅行のスケジュールを組んでいくやり方が多くなります。

しかし、それが日本では簡単ではないのです。

まず、現地の人に相談しようとしても日本語がしゃべれない。だいたい大きな国なら英語が通じるはずなのに、日本はまず通じません。かと言って、旅行会社のドアを開ける気にはなれない。ホテルに泊まってコンシェルジュに聞けばいいけど、それもイヤ。どうしたらいいんだろう、となることが多いのです。

よく考えてみれば、そのような無鉄砲な外国人観光客のニーズに、日本はまったく応えていないのです。日本の観光情報インフラは、かなりお粗末なものです。

そういうわけで、ゲストハウスにオーナーがいて話ができれば、「どんなところへ行けば楽しいのか、こんな体験がしたいがどうしたらいいか、これを見たいけどどこで見られるか」などなど、質問責めにしてくる宿泊客が多いそうです。

実際、そんな外国人旅行者のために情報を提供することを仕事にしている人もいます。そうしたなかから「民泊ビジネスをやってみようかな」と思い立って、私のところに相談に見える方もいました。

ということは、民泊ビジネスを考えている人が、そのような情報提供に力を入れれば、宿泊客からは大変に喜ばれる、ということです。サービス内容を充実させることによって、それを宿泊料金に組み込むことも可能かもしれません。希望するお客さんには、さらにオプションで料金で、一緒にまわってガイドも務めることができるでしょう。そのようなガイドを雇うことも考えられます。

提供する情報のなかには、観光のためだけではなく、日本を理解するためのものもあっていいと思います。公共浴場での入浴の仕方、駅での電車の乗り方、町の歩き方など、日本人なら当たり前のマナー(しかし外国では不思議な習慣)とか、あるいは日本の現地の人といかに友だちになるか、接し方のコツ、注意点などのアドバイスのような情報もあるといいと思います。

そしてさらに、京都のどこで何が買えるかといったお土産屋さん情報も盛り込んでおき、その店と提携することも可能でしょう。その情報が日本の観光客向けの一般的なものではない、外国人宿泊客に視点に合ったもの、彼らが求める価値をもたらしてくれるようなもの、「その民泊ならでは」のものであれば、とても喜ばれるはずです。

京都にどれだけ詳しい? 京都検定

民泊に宿泊してから、さて京都をどうやって歩こうかなと情報を求めている外国人観光客に対しては、提携している個人タクシーやガイドさんを紹介するという方法は比較的簡単ではないかと思います。

ただし、通訳を入れてとなるとコストがかかりますしコミュニケーションもうまくいかないので、基本的には英語や中国語ができる人でなければいけません。

また、京都の歴史、雑学、現在の京都の裏情報などにどれくらい詳しいのか、その人の力量によって宿泊客の満足度も大きく変わってくるでしょう。スムーズなやりとりで、しかも面白い、価値ある情報とともに観光ができれば、きっと楽しい京都の一日になることでしょう。

ガイドする人の力量をはかるモノサシとしては、たとえば「京都検定」というものがあります。これは京都についてのさまざまな知識を問う検定試験で、京都商工会議所が主催しています。3級から1級まで三つのレベルに設定されています。

「京都検定」のホームページには過去問も掲載されているので、3級の問題からいくつかピックアップさせていただきましょう。あなたはいくつ答えられますか?

Q1 京ことばで「オブ」の意味はどれか。

イ)でこ ロ)惣菜 ハ)茶 ニ)瘤

Q2 「伏見のお酒は( )してよろしオスナー」と、とろんとした穏やかな口あた りを表す。

イ)ホッコリ ロ)モッサリ ハ)ベッタリ ニ)マッタリ

Q3 甘煮のゴボウをはさんだ正月を代表する伝統菓子はどれか。

イ)粟餅 ロ)行者餅 ハ)ちご餅 ニ)はなびら餅

Q4 京ことばで「イケズ」と言えば、( )のことである。

イ)弱虫 ロ)突き当たり ハ)最後 ニ)意地悪

Q5 古来より詩歌に詠まれた「御室桜」で有名な寺院はどこか。

イ)仁和寺 ロ)醍醐寺 ハ)勝持寺 ニ)常照皇寺

Q6 京の俗諺で、一大決心することを「( )の舞台から飛び降りる」という。

イ)御室 ロ)清水 ハ)高雄 ニ)黒谷

*答え……Q1・ハ) Q2・ニ) Q3・ニ) Q4・ニ) Q5・ア) Q6・ロ)

リピートしてもらうための「イベント情報」

宿泊していただいたお客さんがまた数年後に来ていただける、そのようなリピート客が多いということはそれだけ民泊として評価されたことです。京都に来てここに泊まる価値が高い、ということを客観的に示してくれます。

それは、宿泊客からの口コミが伝わるということでもあります。民泊のマーケティングでも、リピート客をつくることはやはり大事なのです。

京都の二条城の近くの町家に、民泊をつくったオーナーがいます。その民泊施設は、なぜかフランス人が多く、そのなかには毎年のように来るリピーターも数多くいるそうです。

その民泊に泊まって周辺を観光してみたらとてもよかった、そこからもう少し足をのばしてみたい、というところで帰る時間になってしまった、また来てみたい、その思いをフランスまで持ち帰ってくれるのでしょう。

京都には、外国人が観光して喜ぶようなところがたくさんあります。京都であればこそ、民泊でも外国人旅行者のリピーターが生まれる可能性は高いのです。

毎年、紅葉の季節に訪れる人もいるでしょうし、あるいは四季折々の京都を楽しみたいと、季節を変えて再訪する人もいるでしょう。いずれにしても、リピートする外国からのお客さんを満足させられるコンテンツを京都は持っているのです。それを活かす民泊にしていく工夫が必要です。

京都市の観光コンテンツとして、各地で大小さまざまなイベントが開催されています。これも京都への集客に大いに力を発揮しています。外国人は祭りやイベントが大好きですが、やはりここでも外国人旅行者への情報インフラは十分ではありません。

夏の祇園祭や五山送り火(大文字焼き)のような大きなイベント情報は世界中に発信されているでしょう。しかし、インターネットを検索すれば、小さくてユニークなイベントもたくさんあります。外国人観光客が体験すれば喜びそうなものも、少なくありません。ところが、そうしたサイトは日本語ですから外国人の目には入らず、ほとんどが知られていないのです。これももったいない話です。

お客さんが帰るときに「これを見逃した」と思わせるくらい、観光コンテンツはいくらでもあっていいと思います。その情報を民泊施設がPRできれば、リピートへの力になるかもしれません。

あるいは、民泊をつくった地域と共同で、なにかのイベントをやってみるというようなことも可能かもしれません。周辺に観光客がお金を落としてくれそうなお店がたくさんあれば、そんな地域での取り組みも可能だと思います。

京都では最近、8月に七夕のイベントが行われるようになりました。7月の祇園祭のあとは少しお客さんが減るので、何かないかということで考え出したのでしょう。

あるいは、京都の冬は寒いからか真冬もお客さんが少なくなります。そういうことから、東山や嵐山では10年ほど前から「花灯路(はなとうろ)」というイベントが行われるようになりました。夜間、お寺や神社やその周辺の町並みに露地行灯を設置して、美しくライトアップするのです。最近は各地でイルミネーションのイベントが人気ですが、京都も花灯路には毎年たくさんの人が集まるようになっています。

嵐山は12月中旬、東山では3月初旬ごろに10日間ほど行われるイベントですから、外国人観光客にとっては偶然その期間に京都にいなければ見ることができないかもしれません。それでも情報があれば、「これもいつか観てみたい」と思って帰ってもらえます。それだけでも、リピートのためのPRにつながります。

近隣の銭湯と提携する

京都に来る外国人観光客が日本のお風呂に入りたがるという話は、第2章でもしました。西洋人はもちろん、中国や韓国の人たちも日常的に「湯船につかる」ということはしないようです。

最近は日本でも、冬でもシャワーですませてしまう若い人が増えているようですが、それでも日本では「お風呂に入る」ことはイコール「湯船につかる」ことになるほど当たり前のことでしょう。そこに外国人の生活との大きなギャップがあるわけで、そのようなギャップに観光客は惹かれるのだと考えればよいと思います。

前述のように、民泊施設を設計する計画段階で、お風呂場や浴槽を工夫してみる価値は大きいはずです。実際、露天風呂をつくった民泊オーナーは大成功をおさめています。

ただし、そこはしょせん民泊のお風呂ですから温泉旅館のように大きな大浴場というわけにはいきませんし、ほかの旅行客と一緒にお風呂に入るという、日本でしか味わえない体験もできません。

そこでスポットライトが当たるのが「銭湯」です。

じつは「日本の銭湯に入ってみたい」と考える外国人観光客がたくさんいるのです。

民泊のお風呂をつくるのにそこまでお金をかけられない、建物が狭いのでシャワー室しかつくれない(これは京都の条例で問題となることの多い論点なので、これも第5章で詳しく述べます)、ということであれば、近くに銭湯がある、もしくは民泊内で銭湯の場所を案内しておく、ということもよいでしょう。

銭湯の近くに民泊施設のよい物件があれば、外国人をターゲットとした民泊ビジネスとして有利になることは間違いありません。そこと提携することも、よいアイデアだと思います。銭湯もお客さんが少なくて困っていると聞きますから、双方にとってメリットはあるはずです。もちろん、外国人の宿泊客には入浴マナーを徹底してもらうことをしっかり情報として伝えておくことなどは大切な条件となるでしょう。

ただし、ひとつ根本的な問題があります。じつは、京都には銭湯が少ないのです。

京都も日本のほかの都市と同じように、昔はすべての家庭にお風呂があったわけではなかったはずです。町家の物件などを見ても、お風呂場はあとで付け足しでつくったようなもので、ちょっと入りたくないなと思わせるくらい小さいものだったりします。だから昔は銭湯はあったはずなのですが、ほとんどは廃業してしまったようです。

スーパー銭湯のようなものがあればいちばんよいのですが、これも京都の町中にはありません。つまりお風呂に関しては京都は弱いところなのですが、逆にここになんらかの工夫をするチャンスもあるのかもしれません。

外国人観光客は日本のコンビニが大好き

最近はかげりを見せてはいるものの、日本はまだまだ世界経済の優等生です。一時は世界ナンバーワンに迫る経済大国だったわけですが、国土自体はとても狭く、人々が住んでいる家も、その当時でさえ「うさぎ小屋」などと揶揄されたほど小さいものです。

しかし、小さいなかによいものがぎゅっとコンパクトに詰まっているのが日本、あるいいは日本製品というイメージは外国人には強いのでしょう。

コンビニが外国人観光客に人気があるのも、同じようなイメージがそこにあるからかもしれません。

日本のコンビニは、小さな店舗のなかにお菓子、ご飯、パン、お惣菜、さまざまなアルコールやソフトドリンク、あるいは下着や靴下などの衣料品、文房具、パソコン関連用品から、はてはその地場の野菜まで、ないものを探すほうがむずかしいほどの品揃えを誇っています。そのコンビニが町中いたるところに見つかるのですから、旅行中の外国人にはパラダイスなのかもしれません。お土産さえ、買うことができるのです。

とくに中国や韓国から来た人はコンビニが好きですが、欧米の旅行者もコンビニは文字通り「便利なお店」として重宝しているようです。ヨーロッパにもスーパーをはじめいろいろなお店がたくさんありますが、日曜日はすべて閉まってしまい、夜も暗くなると開いてないといった町が当たり前なのだそうです。その感覚からすると、日本中で夜中じゅう営業している玉手箱のような「コンビニ」は夢のような世界なのかもしれません。

京都には、全国展開しているような大きなスーパーマーケットがありません。ごく最近、京都駅の近くに大きなショッピングセンターができましたが、このような売り場は京都ではまったくなかったのです。

大学生時代に私は京都にお世話になっていましたが、そのころには大店法という法律があって京都には大きなスーパーはありませんでした。南区には平安時代のころから始まったと言われる錦市場があって(いまもあります)、当時からいろいろな店が集まって賑わっていました。しかしそれも日中だけで、夜になれば閉まっています。唯一、夜もやっていたのは「生活協同組合(いわゆる生協)」だけだったと思います。

その後、「フレスコ」とか「大黒屋」などのスーパーができましたが、いずれも巨大スーパーではなく、関東の人に聞いてもほとんど「知らない」と言われます。そうしたスーパーもいまのコンビニに近いような感じで、品揃えが多く、小さい店舗にコンパクトに商品がまとまっているイメージでした。

ですから京都の人にとって、コンビニはあちこちにあっていつでも営業しているから便利くらいの感覚なのですが、外国人観光客の目には「あこがれ」に近いようなものがあるようなのです。このあたりもギャップといえるかもしれません。

民泊ができて外国人観光客が増えたために、その近辺にあるコンビニの売上が急激に伸びて、オーナーが喜んでいる、という話はよく聞きます。

民泊ビジネスをスタートさせるなら、最寄りのコンビニと提携して、より効果的な工夫ができないか、一緒に考えてみるのも面白いのではないかと思います。

あるいは、逆にコンビニのオーナーが同じ建物や近隣で民泊ビジネスを始めるというスタイルもまた、お互いによい影響を与え合ってうまくいく可能性も大きいと思います。

中国人観光客に人気? 健康診断ツアー

外国人観光客をターゲットとした民泊ビジネスでは、やはり外国人が日本の、京都のどのようなことがらに目を輝かせるのかを、先入観なしで理解しておくことが大切だと思います。それは前述のように、日本人の感覚で「想像」してもわからないことが多いのです。外国人は日本人を不思議の目で見ていますが、日本人にとっては不思議でもなんでもないからです。

たとえば、中国人観光客のあいだでは、日本で健康診断を受けられるツアーというのが大人気になっています。これには理由があります。

そもそも中国には日本で一般に行われているような「健康診断」という医療サービスがありません。日本なら一般的な検査ならたいていの医療機関で受けることができます。だから、そのために日本へ行く、観光がてら健康診断を受けたいという人がたくさんいるわけです。

そこに目をつけた旅行業者が、日本で会社や学校の健康診断が少ない時期に、中国人向けの「健診ツアー」を企画しました。健康診断は、年度変わりや真夏といった時期にはあまり行われません。医療機関としては、そういう時期に中国から大挙して健康診断に来てくれれば、とてもよいビジネスになるわけです。

単独でやってくる民泊の宿泊者に対しても、その時期に合わせて利用してもらえれば日本の特定の健康診断が受けられる、というようなパックサービスが有効かもしれません。医療機関と提携できるのであれば、宿泊オプションとして「健診」をつけることも可能でしょう。

日本の「香木」を求めて京都のお寺へ

日本の骨董品を求めて海外からやって来る「好事家」もたくさんおられます。高価なものを購入するために来日する人もいますが、陶器などが好きな人は京都へ行ったついでに骨董市を見ることを楽しみにしていたりします。

市は、そこで暮らす人々の生活がよく表れるところですから、外国人旅行者には魅力的なのです。これは日本人が外国へ行ったときも同じだと思います。京都の市場やフリーマーケットにも、たくさんの外国人観光客が集まってきます。

京都でいえば、日本の「香木」を求めてやって来る中国人もいます。

茶道や華道と同じように、日本には「香道」というものがあることをご存じでしょうか。東南アジアでしか採れない天然香木の香りを鑑賞する、芸道です。お茶などと同じように、礼儀作法や立ち居振る舞いの決まり事がたくさんある、禅の精神も伝える、日本古来のものなのです。

この香道がいまや中国、台湾、韓国などで人気となっていて、現地では香木がとんでもない高額な値で売買されています。香木は日本にしかないので、それを日本への旅行の際に購入したい、というわけです。

香木は東南アジアで採れるものなのに、なぜ日本にしかないのでしょうか。それは、昔の日本人が東南アジアの木をお寺の蔵などに眠らせておいたものが、香木となるからです。そうやって何百年も寝かせることによって、はじめて香道で使えるような芳しい香りを放つ香木になるのです。

香木は中国では大変に貴重で高価なのですが、そのホンモノは日本のお寺の蔵に転がっている、そしてそのことをほとんどの日本人が知らない、ということのようです。中国人がその香木を日本のお寺で高額で購入して中国に持ち帰り、その何倍も高い値段で中国の風流人に売っています。

日本人の知らないニッポンは、たくさんあります。

徳島県三好市のかかし村落の例

これは京都の話ではありませんが、最近徳島県の三好市にある人口30名たらずの小さな村に、とんでもない数の観光客が押し寄せているそうです。そのブームをつくったのは、外国人観光客だそうです。

お目当ては、その村で暮らす67歳の女性がつくる「かかし」です。

この女性は13年ほど前に、作物被害を防ぐためにかかしをつくって畑に設置しました。すると、それが近所の人に「ホンモノみたい」と評判になりました。それが嬉しくて、その女性は以来かかしをつくり続けたのです。

やがて、製作するかかしの目的は害鳥や害獣を遠ざけるためではなく、むしろアートに近いものになっていきました。女性は、つくったかかしを村人に見てもらうように、人のいない村のあちこちに置きました。現在では小さい村を歩くと、バス停に、神社に、さまざまな温かみのあるかかしが展示されています。

これを見た外国人観光客がたまたまネットに口コミをあげたのでしょう。数年前から、この過疎の村をぶらりと訪れる外国人観光客が急激に増えはじめ、いまでは30人しか村人がいない小さな村落には日本人を含めた観光客が列をなして歩いているそうです。

外国人の口コミ情報が世界を駆けなければ、決してこのようなことは起こり得なかったはずです。そのような時代になった、ということでしょう。

この三好市の過疎村の話はひとつの例ですが、この例に限らず、外国から興味をもって見られている日本がどういうものなのか、その正しい姿はじつは日本人にはよく見えないことが多いのです。実際に日本に来た外国人観光客の行動を見て、初めて「へえ~」となるわけです。それで「外国人が評価してるからいいものなんだろう」と、日本でも逆輸入的にブームになったりするわけです。

これは現代だけの話ではなく、たとえば浮世絵などもまったく同じではないでしょうか。かつては包み紙として使われていたような浮世絵が、海外では、異国情緒を誘う魅力的な絵として評判になりました。一流の画家までが真似するほど大変な芸術として評価されるようになったのです。そうなると日本でも包み紙などには使わなくなり、高価な美術品になるのです。

外国人観光客をターゲットにする民泊ビジネスでも、これと同じような盲点がある、ということだと思います。

許可申請の手続き代行は、行政書士事務所に相談すればよいのだが……

【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。