**第4章 許可が下りなくても、あきらめないで!**
私は京大の大学院を出たあと、1999年から千葉県成田市の職員になりました。
いろいろな仕事を行いましたが、なかでも徴税吏員としての経験を重ねたことが、行政書士という専門家として独立してオールラウンドなサービスを提供する発想、行動に結びついたのではないかと思っています。
徴税吏員は、簡単に言えば税金の取り立て屋さんです。市民税、固定資産税、事業所税、あるいは保険料など、市に納められるべき税金が滞納されているときに、実際に家まで行って払ってもらえるようにするのです。
しかし、国税局がやるように、すぐに滞納者が所有しているクルマやらテレビやら箪笥やらを差し押さえるようなことはしません。そこは、国税と市税の「取り立て」の大きく異なるところです。
というのは、国税は、滞納されている分を回収しさえすれば、それで終わりなのです。所得税や法人税を滞納している人や会社は、すでに利益が上がらなければ、それ以上の税金は発生しません。滞納している分を、言い方は悪いですが、むしり取ってしまえば税吏員の仕事は終わります。
しかし地方税は、そういうわけにいきません。市民税や固定資産税は、収入があろうがなかろうが、毎年発生するのです。市の財政から言えば、それを毎年しっかりと払い続けていただく必要があります。
したがって、市の徴税吏員は滞納者のお話、つまり滞納している事情をしっかりと聞かなければなりません。そのバックグラウンドを理解しなければいけないのです。
話を聞けば、「お金がないから払えない」という当然の話になります。なかには明らかに市が決めている生活保護の対象に当てはまる人もいますが、もちろん申請などしていません。そこで、まずは生活保護の申請手続を勧め、役所に帰ったら担当窓口にも口利きをしておく、というような動きが必要になっていきます。
あるいは、不景気で固定資産税を払えなくなった工場がたとえ倒産しても、名義が変わらない限り固定資産税は変わらず課税されていきます。しかし利益が出なければ、税金は払えません。それは市の財政にとって大きな痛手になります。そこで、その工場を税金を負担できる優良企業に購入してもらえないかと各方面に折衝する、というようなことも重要な仕事になってくるわけです。
市から見れば収入の源を助けるという意義があるわけですが、そのような仕事をしながら、市役所職員としてはまた違うことを考慮していきます。
つまり、市役所という機構全体の基本的な役割、市民へのサービス業であるというポイントです。滞納した税金を納めさせることに成功したら、その市民の生活のことなど関与しない、それでは地方自治体の仕事ではなくなります。市役所の収入のためだけでなく、市民へのサービス機構として失格になります。
払えない税金を払えるようにするには、その人全体の問題を解決していかなければなりません。そこに市職員は立ち入っていくことが必要なのです。
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。