**第4章 許可が下りなくても、あきらめないで!**
成田市には、市民相談所というものがありました。いまもあると思いますし、ほとんどの市区町村にもあると思います。
私は徴税吏員をやっていた関係で相談員としても数多く応対させていただきました。市民の相談内容は、税務、不動産、健康保険、ご近所の苦情など多岐にわたります。
市民相談所というのは、それらの専門家が常に常駐して待ち構えているわけではありません。毎月第3火曜日は税理士の先生、第2水曜日は司法書士の先生、金曜日は消費者センターの専門家というように、さまざまな専門家が入れ代わり立ち代わりやって来て市民の相談に乗っています。
市民が相談を受けたい専門家を集めると、実にたくさんの人員になります。月に一人ずつスケジュールを組んでいくだけで、1か月が埋まってしまうほどです。
ところが市民の大部分は、自分の相談内容に的確な回答をしてくれる専門家がいつ市役所にきているのか、だいたい知りません。相続税のことで相談に来たのに、その日は土地や建物の相談日で宅建の先生しかおらず無駄足になる、というようなことはとても多いのです。
公的機関だけではありません。たとえば、日本の医療も同じような問題があります。かなり専門的な医療が必要な疾患が考えられる場合、あるいは原因が不明確であるような場合に、患者さんはいろいろな診療科をたらい回しにされることがあります。
そのようなことを避けるためにも、全体を広く浅く、しかし重要な要件について的確な知識をもって、その患者さんの受けるべき診療科へガイドしてあげられることが必要でしょう。それが、やはり専門分化によって難しくなっているという問題が医療にもあるようです。
このような総合的に見たサービスというのは、考えてみれば当たり前のことです。民間企業は、基本的にお客様の最終的なニーズというものを忘れていてはビジネスにならないから、お客さんのガイドの手順を大事にするものです。
地方自治体も、それは同じでなければなりません。役所も、いろいろな相談や許可申請などでやって来る市民に対して、まずは一つの窓口でオールラウンドに見てあげて、最初に的確な交通整理をしたり、必要な事項をまとめたり、時間的な段取りを教えたりする人がいるべきなのです。
そのうえでおのおのの詳細について必要であればそれぞれの専門家を紹介する、というような態勢があれば、市民はわかりやすく、また安心だと思うのです。そのような顧客第一主義は、どこの役所にも希薄です。
市民相談所に一人ずつ多様な専門家が入れ代わりでやって来るということは、現状では仕方ないことかもしれません。しかしテーマを個別に分けすぎないで、法律に関すること、税金に関すること、不動産に関すること、分野別にそれぞれ一人の専門家が対応できるような態勢がとれれば、市民はもっと便利だろうと思います。
これは市役所のせいばかりではありません。そもそも日本における専門家の在り方の問題でもあります。
私は市役所職員として働きながら、そのようなことを考えていました。そのうえでの行政書士事務所の開業だったので、狭い分野に特化して業務をルーチン化することばかり考えるのではなく、依頼人が何を求めているのか、その最終的な利益を見ながらオールラウンドなサービスを目指す、というポリシーを堅持するようになったわけです。
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。