**第5章 京都市での「民泊」許可申請手続き、その現実**
前に述べた木格子かアルミ格子かの問題で、ある人が役所の申請窓口で担当者から「宿泊する町家に泊まろうと思ってやって来たお客さんが、アルミの格子じゃあがっかりするでしょう」と言われたという話を聞きました。
しかしそれは、市役所が許可・不許可(町家かどうか)を判断するときに、まったく関係のない話です。町家で民泊を営業するが、その町家の雰囲気をセールスポイントにするかどうかは事業者が決めることです。たとえ町家の雰囲気をセールスポイントにするとしても、アルミ格子であってもお客さんをがっかりさせないように配慮することは可能でしょう。
市の職員はなぜそのようなことを言うかというと、きちんと明文化された基準に準拠して判断しようという意思がないからです。できるだけ許可は出さない方向で、ということをベースに、「これは町家、これは町家ではない」という個人的な感覚に判断を委ねてしまっています。それは正式にはアウトです。
ほかの件で、アルミ格子のものを「町家である」という判断を下してもいるのですから、もし訴訟になれば京都市は負けることになります。
いま述べた2階建て増築のケースも、登記簿上、本体の1階部分は戦前からあるという証明ができています。市が求める町家の要件を満たしています。2階部分は町家とは言えない様式で増築されているとしても、その改築の時期が「戦前である」という基準を満たしていないとは誰も証明できません。
そのような状況で申請されたものを、担当者の感覚的な判断だけで「町家ではない」としてしまうのであれば、役所はその担当者の結論をあとあとまで維持していかなければならないことになります。そうでなければ、不公平になるからです。しかし、その根拠は個人的な感覚ですから、どこにも明文化されていません。
これも、訴訟になれば市は負けてしまいます。
私は、なんでも訴訟にするぞ、と言うつもりはありません。しかし法律というのは、もしも訴訟になったらどちらかが勝つのか、負けるのかということを明らかにしているものであって、そのことを前提に世の中では契約書とかお金のやりとりにおける信用なども成立しているわけです。
市役所の仕事も同様です。許可というものは法律や条例を前提に行われているのですから、窓口の対応一つから、そうしたこと(もしも訴訟になったら)を前提として考えておくべきであるのが当たり前なのです。
お風呂の問題……「宿泊客の需要を満たす入浴設備等」
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。