**第2章**
「赤字だから困る」という単純な話ではありません。減価償却を続ける個人は、基本的に新しくできた法人の社長ないしは役員となるはずで、法人からは役員報酬を得ることになります。得た報酬に対しては当然、所得税がかかってきます。
そこで使用料や賃料から減価償却費を差し引いた赤字が、ポイントとなってくるのです。すなわち役員報酬にかかる所得税を算出する場合に、赤字を損金として計上することができるのです。その結果、役員個人の所得税は、役員報酬から赤字を損金として差し引いた額を基準として計算されることになります。これを「損益通算」と呼び、赤字の額によっては所得税を支払わなくてもよいケースがあります。
もちろんこれは合法的な節税法です。実際、この「損益通算」をもっとも活用しているのが兼業農家でしょう。サラリーマンとして働きながら、兼業として農家を営んでいる場合は、たとえば農協などから購入したトラクターやコンバインなどの設備を減価償却することができます。農業自体で収益を上げることは基本的に難しいため、農業では赤字が大きくなります。するとサラリーマンとしての給与所得と農業での赤字を損益通算した結果、所得税に関して大きな節税効果を得られるのです。
何らかの資産を持ち、それを減価償却している個人事業主が法人化する場合には、この損益通算による節税効果を試算することが一案です。これにより法人立ち上げ時に、資産を現物出資した場合、あるいは個人として法人に貸す場合の、どちらがよりメリットがあるかを的確に判断することができるのです。
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。