**第2章では、債権・債務、暮らし、契約・時効関連、相**
最も確実なのは、遺言書を残してもらうことです。つまり、自分に万一のことがあったとしても、事業承継には影響のないように遺産分配することを、事前に決めておくわけです。ただし、本人がまだ元気な場合は、遺言を書くことを嫌がるケースもあります。その場合、後継者を創業者の任意後見人に指名しておくことです。これにより、創業者が認知症などで判断能力を失った場合に対処することができます。
あるいは法的効力はありませんが、私署証書を使う手があります。これは公正証書ではありませんが、公証人が認めた証書です。たとえば創業者と付き合っている女性がいる場合、将来も結婚しないという契約書を公正証書として作れればいいのですが、こうした内容は公序良俗に反するため公正証書として書くことができません。
そこで内容は公正証書にはできないけれども、ある文書にサインしたことを証明できるものとして設定されているのが、私署証書です。これはその文書の中身ではなく、その文書にサインしたことを公証人が認めるものです。公正証書のような法的効力はありませんが、公証人の前で両者がサインすることで、ある種のけじめになり、心理的歯止めとしての力はあるでしょう。事業承継についても、実はいろいろな問題が絡むケースが多いため、可能な限り早い時期から、関係者と密接なコミュニケーションを取り協議しておくとよいでしょう。
※※遺言の必要性の項目追加?※※
行政サービスの活用で日々の安心を手に入れる
必要な行政サービスをどうやって見つけるか
行政サービスをうまく活用すれば、生活するなかでの余計なトラブルを避け、効率的にものごとを進めたりできます。もちろん、市役所や町役場に自分で出向いて調べれば、大抵のことはわかるでしょう。行政サービスの中でも給付系のものは、市役所などのホームページを丹念に見ていけば、提供されているサービスと、それを得るための方法などが見つかります。実際に自治体の多くが『ライフイベント』などの項目で、用意しているメニューを紹介しているケースが多いようです。ホームページ内を検索するシステムも用意されており、さまざまな手当などをうまく申請すれば、暮らしの問題を解決できる可能性が高まります。
ところが、この検索システムを使って、たとえば「子ども手当」を調べてみると、どうなるでしょうか。私が暮らす京都市のホームページでは、次のような順番で検索情報が表示されました。
①京都市:京都市児童手当事務処理要綱
②京都市:児童手当について
③京都市:地域福祉課・児童家庭課合同分室へようこそ! ~児童手当、子ども医療、高校進学・修学支援金~
④京都市左京区役所:児童手当
⑤京都市上京区役所:児童手当
トップに表示された「京都市児童手当事務処理要綱」を見れば、そこに書かれているのは、まさしく要綱つまり条文です。この文章を読んで、スラスラ理解できるのは法の専門家でしょう。しかも、この条文には「子ども手当」をもらうための方法は書かれていません。2つ目の「児童手当について」を見ていくと、パンフレットのPDFデータが掲載されているので、データをダウンロードして見ることができます。
パンフレットを見れば、いろいろ詳しく説明が書かれています。その内容は、ホームページに掲載されているものとほぼ同じです。どちらを見ても、おそらく必要な情報は手に入れることができるでしょうし、ホームページからは各種申請用紙のPDFデータをダウンロードできます。これに自分で必要事項を書き込んで、持っていけばよいのです。
とはいえ児童手当の請求書式リストには、請求書、改定届、現況届、変更届などが20ほど並んでいます。法律に詳しくない人が、自分にとってどれが必要なのかを見極めるのは苦労しそうです。
これが許認可系のサービスとなると、どうなるでしょうか。ホームページを見ても、許認可に関する説明は見当たりません。これも京都市のホームページで「許認可」をキーワードに検索すると、次のような項目が表示されました。
①京都市消防局:条例等に定める許認可等に係る審査基準及び標準処理期間の設定について
②京都市:建築基準法その他の法令に基づく許認可
③京都市:建築基準法に基づく許認可に関するよくある質問と回答
④京都市:京都市の環境アセスメントについて
たとえば町屋旅館を開業したいと考えている場合に、必要な許認可と手続きを見つけるのは、かなり難しそうです。
これでは、せっかくさまざまな悩みやトラブルを解決してくれる行政サービスが豊富に用意されているのに、それを簡単に使うことができません。
法制度と行政サービスを組み合わせればワンストップで解決できる
行政サービスを活用するためにもっとも便利なやり方は、行政サービスのことをよくわかっている法の専門家に最初に相談することです。行政と法律の両方に明るい専門家を窓口として行政サービスを活用すれば、いろいろな人や窓口を回らなくてもワンストップで問題を解決できる可能性がぐんと高まります。
では、法の専門家といっても誰に相談すればよいのでしょうか。
士業なら弁護士、弁理士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、通関士があります。弁護士は裁判関係、弁理士は特許に関わる専門家であることぐらいは、一般的に知られているでしょう。
司法書士を調べると、辞書には次のように記されています(小学館『大辞泉』より)。
「他人の嘱託を受けて、登記・供託・訴訟などに関し、裁判所・検察庁・法務局・地方法務局に提出する書類の作成を職業とする者」
一方、行政書士はこのように記されています。
「他人の依頼を受けて、官公署に提出する書類などを作成することを業とする者。行政書士法で規定されている」
官公署、つまり自治体を含むお役所のことです。
結局のところ、相談する悩みやトラブルの内容に合わせて、相談相手を選ぶのがベストといえます。裁判沙汰なら弁護士、特許を申請するなら弁理士、会社の登記などを行う場合は司法書士です。そして、行政サービスを受けるための書類を作るのが行政書士です。つまり、各士業の中で、行政サービスについて網羅的に知識を身に付けているのが行政書士なのです。
行政書士はさまざまな問題解決に使える行政サービスを知っているだけでなく、行政サービスを活用するための法的手続きや書類作成のプロです。多種多様に用意されている行政サービスを、より確実に受けるためには行政書士を使うと効率的といえるでしょう。
ただし、行政サービスに関してなら、何もかもを行政書士がまかなえるというわけでもありません。業務の中には行政書士が行うことを法律で禁じている項目があります。たとえば登記に関する書類作成は司法書士の業務であり、行政書士が行うことはできません。納税申告書は税理士しか扱えませんし、労働基準監督署や公共職業安定所などに提出する申請書、届出書などは社会保険労務士だけが扱える書類です。これらを行政書士が代行することは禁じられています。どの士業が、どの業務を担当するのかは、法律によって細かく規定されているのです。
依頼内容によっては、複数の士業の協力が必要になります。たとえば新しく会社を設立する際に消費税の減免措置を盛り込む場合などは、行政書士と税理士の連携など士業間での協業による対応が求められます。自身の問題解決にワンストップでの対応を求めるのであれば、立士業とネットワークを持つ行政書士に相談に行かれることをおすすめします。
トラブルを避けるために法の専門家を活用する
事業を行っている人ならば、それを進めていく上で思わぬトラブルに見舞われることもあります。たとえば取引先ときちんとした契約書を結んでいなかったために、約束通りの業務をしてもらえなかった、などということもあり得ます。そんなことが起こらないようにするためにも法の専門家にサポートしてもらいましょう。
ビジネスにおいて、大手企業が契約書や議事録をきちんと作るのは、将来トラブルが起こるのを防ぐためです。これは至極真っ当な考え方であり、トラブルを起こさないことは即ち、業務をスムーズに進めることを意味します。だから法的な業務を行う部署として法務部などがあるのです。
では、法務部を置くほどには財政的にも人事的にも余裕のない中小以下の企業では、契約書や議事録を作る必要がないのでしょうか。それら書類の本来の役割を考えるなら、書類作成は企業規模で判断する問題ではないことをご理解いただけるでしょう。契約書も議事録も、業務を円滑に進めるために必要な書類なのです。
とはいえ現実問題として、コストのかかる法務スタッフを雇う余裕が、多くの企業にないことも理解できます。そんな時こそ法の専門家、具体的には弁護士や行政書士を活用していただければと思います。
たとえば行政書士なら、主に次の3つの業務を行います。
「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
そのうち、法に関するものは「権利義務」と「事実証明」の書類です。
権利義務に関する書類、具体的には契約書をきちんと結んでおけば、お互いの役割や責任を明確にできます。事実証明に関する書類にあたるのが、たとえば会議の議事録です。話し合いをした内容をきちんとした書面にまとめて、相手と合意を図っておけば業務がスムーズに進むはずです。
そこまで気を配っていてもトラブルが起こることがあります。万が一、トラブルが起ったとしても、裁判は極力避けるように努めるのが賢明です。最終的に裁判で調停となった時に、どうなりがちかは第二章の最後で記したとおりで、裁判所が双方の事情を正確に理解した上で、踏み込んで判断を下すことはまずありません。基本的には判例に従い、形式に則った調停しか行われません。なぜなら細部の事情を正確に理解するための余裕が裁判所にはなく、状況を踏まえた判断を下すことが基本的に難しいからです。
一方で特に一事業者が、国や大企業と裁判で争うことにでもなれば、その勝ち目はゼロに等しいものと覚悟する必要があります。これを象徴的に示すのが刑事裁判の結果です。刑事裁判では基本的に、個人(被告)が、国を原告とする裁判に立たされます。その結果日本では、実に刑事裁判の99%に有罪判決が下されるのです。意外に知られていない可能性が強いですが、厳然たる事実です。だからこそ、ごく稀に無罪判決が出るとニュースとなり、マスコミで大きな扱いを受けるのです。そのため一般の方の記憶に残るのは無罪判決ですが、実際には、刑事裁判のほぼ100%が有罪で終わります。
なぜ、こんなことになるのでしょうか。
実は、裁判の勝敗は、裁判が始まる前に付いているケースが、ほとんどなのです。刑事裁判の場合なら、まず警察が徹底的な捜査を行います。それにより押収された資料を元に、裁判で勝つための資料作りが綿密に行われます。プロが裁判官に採用されやすいような資料をつくり上げるのです。
裁判官が判断する基準の一つは、こうした事前資料です。つまり裁判が始まる前の資料の段階で、すでに被告の弁護人にとっては、取り返しの付かないほどの大きな差が付いているのです。被告の弁護人が資料作成にあたることができるのは、あくまでも被告が逮捕勾留されてからになりますから、その差は極めて大きいと言えるでしょう。しかも、よほど大きな案件の場合は別として、弁護士は基本的に個人です。仮に何人かの弁護士によるチームを組んだとしても、警察の組織力に勝てることは、まずありません。
税金に関するトラブルなどで訴訟沙汰となった場合も同様です。税務署サイドでは、税務署職員の中でも特に優秀な人材を選りすぐった部署が対応することになります。この部署の役割は、まずは案件ごとに必要な資料を徹底的に集めることです。資料は訴訟相手に関わるものだけでなく、過去の同種の裁判での判例や、似たようなケースについて裁判官が書いた論文などまでが含まれます。ここまでの資料を個人弁護士が集めることは、実質的に不可能です。こうした下準備を行った上で「勝てる」と判断したからこそ訴訟に持ち込まれるのです。これに個人が対抗したとして、勝てる可能性などほとんど無いことがおわかりいただけるでしょう。
相手が法務部などの専属部署を持つような大企業の場合も、同じです。法務部のスタッフは、日常業務として裁判沙汰に備えているのです。このクラスの企業が相手となれば、トラブルが起こる以前に勝負が付いている可能性が高いのです。
大企業が取引きする際には、まず相手に対して契約書を交わすよう求めます。その契約書には、何かあった時には自社に有利になるような文言が、必ず盛り込まれています。契約書を作るのは大企業のプロであり、それを読むのが中小零細企業の場合なら、法律のことなど不慣れな人たちです。そんな相手と、何かトラブルが起こってしまってから争ったとしても、なかなか勝ち目はありません。
こうした事態を防ぐために行政書士の力を活用できます。たとえば大企業が出してきた契約書を行政書士に見せて、そのままサインをしても大丈夫かどうかを確認する。何かあった時に自社が不利になるような項目があれば、訂正するよう指示を出す。ポイントを的確に突いた要望を返せば、大企業がこちらを見る目も変わり、取引相手としての信頼性も高まるでしょう。
行政サービスを使ってやりたいことを実現する
さらに、行政サービスをうまく活用すれば、起業などやりたいことを実現できる可能性が高まります。たとえば、独立したいのに手続きがわからない、資金が足りなくて困っているとしましょう。アベノミクスによる成長戦略で起業家支援を国策として打ち出している今、資金調達など起業をサポートする仕組みが実は今大変充実しているのです。
行政サービスを活用する上で考えておく必要があるのは、どの行政サービスも、必ず根拠となる法律があるということです。官公庁も地方自治体も、法律に基づかない行為を行うことは一切ありません。
従って見方を変えれば、少なくとも法律で定められている行政サービスは、適切な手続きを踏みさえすれば、それを要求できることを意味します。そこで適切な手続きを行うために必要となるのが、法律の知識です。定められた手続きを行うことは、行政サービスを受けるための必要条件となります。
また、やりたいことの実現をサポートしてくれる行政サービスとして、重要なのが許認可系のサービスです。一見すると行政サービスとは関係ないように受け止められがちですが、企業の場合、個別の事業者に対して、特定の事業を行ってもよいとのお墨付きを与えることと考えてよいでしょう。そのため許認可の要件は、きめ細かく定められています。たとえば建設業などの場合は、建設業での経営経験のある人が取締役に含まれていないと、建設業の許可が下りないケースもあります(第2章参照)。
仮に許認可を受けずに無免許や無許可で事業を行ったりすれば、営業停止はもちろんのこと、法律違反として罰せられることになります。何か新しく事業を始めようと考えるなら、関連する許認可についてきちんと知っておくことが必要です。
また、起業時の資金が足りないと困っているなら、新たに創業する時に受けることのできる補助金や、新たに雇用をする時に受けることのできる奨励金などを活用できます。これらの返済不要の資金は、会社の運営面でかなりプラスになることでしょう。
許認可の中でも特に許可については、行政官庁による裁量が認められています。裁量とは、行政行為を行う際に、根拠法令の解釈や適用について、行政官庁に判断の余地が許されていることをいいます。つまり、許可の場合は、行政官庁の裁量により、申請自体に不備がなかったとしても申請が拒否されることがあるのです。
では、拒否されたからといって、そのまま引き下がってしまってもよいのでしょうか。何かの事業を始めるために許可を申請した。許可が認められるための要件を満たしていて、所定の手続きにも従っている。にもかかわらず許可されないのでは、やりたいことを実現できません。
そんなときに最初にやるべきは、許可申請を拒否する根拠を尋ねることです。まず、法律上は何も問題がないことを相手に認めさせ、その上で、なぜ拒否するのかを聞き出します。そこで裁量だといわれれば、それまでなのでしょうか。そのような場合でも行政書士を窓口にして交渉すれば、簡単に諦めたり、引き下がったりせずに済みます。
たとえば、私が担当した事例にこんなものがありました。
医療系のクリニックの開業申請を行ったのですが、要件を満たしているにもかかわらず、その名称が問題となり許可がおりませんでした。なぜ、申請した名称ではだめなのか、申請窓口で根拠を求めたところ、「医師会との取り決めがあるからだ」と言われたのです。普通の方であれば、そこで引き下がってしまうこともあるかもしれません。しかし、私が理詰めで正当性を示した結果、医師会との取り決め文書に基づいて申請書類を調整することで許可を得ることができたのです。
行政組織も、すべての活動を単独で行っているわけではありません。たとえば医師会のように、ある種の公共性を持つ組織とは、学校検診や予防接種などさまざまな形で連携しています。そのために、クリニックの新規開業などについては、申請窓口は行政組織であるものの、実際の意思決定に際しては医師会との協議が行われているケースなどがあるのです。
根拠に基づいた交渉を行うためには、まず関連する法律について知識のあることが大前提であり、その上で、対象となる行政組織の考え方、判断基準などを知っていると有利になります。このような知識を持っている行政書士なら、安心して仕事を頼めることでしょう。
行政書士は気軽に相談できる法の専門家
裁判沙汰を避けるためには、どうすればよいか。法の専門家に相談すること、といえば、まず弁護士を思い浮かべる人が多いでしょう。実際、アメリカやイギリスでは弁護士に相談するケースがほとんどです。
確かにアメリカは訴訟社会として知られており、ロイヤー(弁護士)の数も日本と比べれば、アメリカが圧倒的に多いのです。アメリカには100万人を超える弁護士がいるといわれ、3万人程度とされる日本の30倍以上になります。アメリカの人口は2015年度のデータで約3億2000万人、日本が同じく約1億2700万人ですから、人口一人あたりの弁護士数で比べれば、アメリカは日本の約13倍になります。
もちろん、その背景には、まず法律や訴訟に対する基本的な考え方の違いがあります。アメリカは基本的に契約社会であり、少しでも契約違反があれば、直ちに訴訟となります。ただし、見落とされがちなのが、アメリカのロイヤーのほとんどが、実は法廷に立つわけではないという事実です。むしろ法廷に立つロイヤーはごく一部であり、大多数のロイヤーが、日本でいう隣接法律職の業務の多くを担っています。つまり、アメリカには税理士、司法書士、行政書士といった資格がなく、そうした業務をロイヤーが担当しているのです。彼らの業務も基本的には、まずは裁判沙汰となることを避けることであり、やむを得ず裁判になった時には勝つことです。
日常生活でのトラブルから、企業間取引で起こるさまざまな問題までを、アメリカではまずロイヤーに相談する。ロイヤーに相談すれば、行政サービスの活用も含めて、ほぼワンストップで問題が解決するからです。
では、アメリカのロイヤーに相当する業務を、日本で担っているのは誰でしょうか。実は弁護士ではなく行政書士です。日本の弁護士のほとんどは、アメリカで法廷に立つ、ごく一部の弁護士に相当すると考えてもらえばよいでしょう。逆に、アメリカで相談者が抱えるさまざまな法的な問題を、行政サービスの活用しながら解決している法廷に立たないロイヤー、それが日本の行政書士です。
つまり、日本でも、個人や中小企業などが気軽に相談することができ、法的な問題を行政サービスも活用しながら解決するワンストップの窓口として最適な存在、それが行政書士なのです。
かかりつけ医のような行政書士がいることで安心を手に入れる
行政書士の役割とは、例えるならかかりつけ医のようなものといえるのかもしれません。常日頃から担当する依頼人と定期的にコミュニケーションを取り、その状況を把握しておく。ここで大切なのは、病気つまりトラブルを未然に防ぐことです。裏を返せば、依頼人が健康に過ごせるように、やりたいことをスムーズにできるように支援することになります。
かかりつけ医は、簡単な治療が必要なら施術を施し、薬が必要な場合は処方箋を出します。同様に行政書士は、行政との折衝を行い、官公署に提出する書類を作成したり、申請の代理業務を行ったりします。
仮に、何か大きな問題が起こった場合には、各専門家を集めて対応を協議します。その時にはかかりつけ医が紹介状を書いて、専門医の診断を求めるように、相談者の意向をもっとも把握している行政書士がイニシアティブを取って、各士業による協業体制を整えていくのです。
事業を行う場合はもちろん、個人でも行政書士に依頼できる、あるいは本来なら依頼したほうがよいことは日常的にたくさんあります。できれば、かかりつけ医となってくれる行政書士を見つけて、普段から相談相手として活用されるとよいでしょう。
かかりつけ医との付き合いでは、相性も重要な要素となります。気の合う行政書士を見つけるにはどうすればよいか。ホームページを見ることは当然として、できれば、その行政書士が書いているブログ記事や、最近ならFacebookやtwitterなどの投稿を読むのもいいでしょう。こうした文章には、その人の人柄が反映されるケースが多々あるからです。
いずれにしても、自分の夢の実現を支えてくれるのが、行政書士という存在です。相談内容にふさわしいキャリアを持ち、性格的にも合いそうな行政書士をパートナーにして行政サービスを上手に活用すれば、日々の安心を手に入れることができるでしょう。
解決策のメニューを提示してくれる行政書士を選ぶ
ひと口に行政書士といっても、いろいろなタイプの人がいます。実際に依頼するとなると、どんな行政書士を選ばてよいか悩まれることでしょう。
実際、行政書士が扱う業務内容は実にさまざまです。たとえば許認可に限っても、その取得対象は1万種類以上もあります。会社設立や渉外業務などの企業に関わる業務から、相続関係、成年後見に加えて、外国人を対象とする入管手続きに国籍取得など個人相手の案件まで、許認可に関する業務は多岐にわたっています。しかも許認可と一口に言っても、許可、認可、特許、届出に分類されているのです。もちろん行政書士が受け持つ業務は許認可だけではありません。担当する業務の幅が広ければ、行政書士によって得意不得意はあって当然といえます。
依頼者がまず見るべきポイントは、行政書士の得意分野です。たとえば行政書士のホームページを見れば、たいていの場合、各自の得意分野がアピールされています。その得意分野が、自分の依頼したい業務内容と合っているかどうかをチェックしてください。
次が実績です。これまでどんな案件を、どれぐらい手がけてきて、その結果がどうだったのか。実績をホームページなどで公開している行政書士もいれば、そうでない場合もあります。不明な点はメールなどで問い合わせてもよいでしょう。もっとも聞いたからといって、すべてを正直に包み隠さず話してくれるとは限りません。けれども、実績はもちろんのこと、こうした問い合わせへの対応なども、行政書士の仕事ぶりを判断する一つの基準となります。
もう一点、チェックすべきは、行政書士としてのキャリアです。学校を出て、いきなり行政書士になる人は少数派です。行政書士になるには大きく三つの方法があります。一つには、行政書士試験を受けて合格することです。行政書士試験の受験者は、平成27年度で4万4366人、そのうち合格者は5820人です。合格率約13%のかなり狭き門となっています(一般社団法人行政書士試験センター資料より)。
行政書士になるためのもう一つ方法は、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士資格を取ること。これらの士業には行政書士の資格が与えられます。さらに公務員として20年以上、行政事務に相当する業務に従事した人も行政書士となれるのです。
ですから、ひと口に行政書士といっても、そのキャリアはさまざまであり、経験には大きな差があります。弁護士資格を持つ人なら法律に詳しいだろうし、弁理士資格を持っているなら特許関連についての専門知識があるはずです。公務員出身者なら、行政の内情に詳しいでしょう。どんな行政書士に頼むべきか。依頼内容と相手のキャリアを勘案して判断するのがよいと思います。
私自身がそうだからというわけではありませんが、行政書士の主要業務が行政組織との折衝であるため、行政組織で仕事をした経験は、重要な判断要素と考えてよいのではないでしょうか。行政組織独特の判断基準や意思決定のプロセスを理解していれば、それだけ行政との交渉がスムーズに運ぶからです。
正しく知って選択することで自分にぴったりのサービスを活用する
行政サービスには、ほかにもいろいろなものがあります。それらのサービスについて正しく知って、選択することが悩みごとを解決するためには必要になります。とはいえ、実際に市役所に足を運ぶとなると、さまざまな窓口があり、どこでどんなサービスが提供されているのかがよくわかりません。
現在、ほぼすべての役所がホームページを開設していますので、まずは自分が住んでいる市町村のホームページを見てみましょう。これなら自宅で簡単にアクセスでき、検索機能も付いています。さらには、メール問い合わせに対応しているところも多いでしょう。この便利なシステムを利用しない手はありません。
一方、行政書士に依頼するような場合でも、人により得手不得手があります。そこをきちんと見極めて相談するようにしましょう。許認可に強いタイプ、民事法務を得意とする人や経営コンサル的な人、そして個人や企業の夢の実現をサポートすることを一番の役割と考えている行政書士もいるのです。
それでは、どのタイプの行政書士に相談するべきか。
これは相談する内容にもよりますが、重要なのは「相談する行政書士がどれだけ行政サービスに詳しいか」ということです。このポイントだけはしっかり確認しておきましょう。あなたが求めている行政サービスとは異なる業務のみに特化した行政書士だと、本来なら使えるはずの行政サービスにたどりつけない可能性も出てきますので注意してください。もし、相談に行った先の行政書士が不慣れに感じるようであれば、「その業務に精通した行政書士を紹介してください」とはっきり伝えることも必要です。
法律が変われば行政サービスも変化していきます。そうした変化もきちんとおさえているのが相談すべき法の専門家です。そんな行政サービスを使いこなすプロ、行政書士をうまく活用することで、みなさんの人生がより豊かなものとなるでしょう。
おわりに
行政サービスを使えば、多種多様な問題を解決できる。それにも関わらず実際には行政サービスに、どんなメニューがあるのかが、ほとんど知られていない。こんな問題意識が、この本を書く動機となりました。
日本の行政サービスは意外なほど充実しています。一般に行政サービスといえば、何かを与えてくれる給付系のイメージをもたれがちです。けれども、世の中の秩序を維持するためのさまざまな許認可も行政サービスなのです。
そして、これが最も重要なことなのですが、行政サービスとは、あなたの暮らしをよりよくするためのものです。不本意ながら経済的に困窮しているため子どもに不自由な思いをさせている時なども、さまざまな給付が助けてくれます。何か事業を興したい場合には、行政サービスをうまく使うことにより、よりスムーズに夢をかなえることができます。行政書士は、そのためのお手伝いをする仕事である。そう私は考えています。
イギリスにはバリスタとソリスタと呼ばれる、二種類の弁護士がいます。どちらも弁護士であり、法律のプロです。ただし、日本語に訳すなら「バリスタ」が法廷弁護士、「ソリスタ」が事務弁護士です。訳語が示すように、バリスタは法廷に立つ弁護士であり、事務処理を受け持つソリスタが法廷に立つことはありません。言ってみればソリスタは、裁判を支える縁の下の力持ちのような存在です。
相談者との関係でいえば、バリスタが相談者と直接接触することはありません。相談者が話をする相手はソリスタです。話をするのは裁判などになる前のことが多く、何かやりたいことがある人が、将来のトラブル発生を避けるために相談する相手がソリスタなのです。といえば、行政書士とソリスタが似ていることを理解いただけるでしょう。
ソリスタは相談者の相談を受けて、事前に契約書を作ったり、税理士など各方面の専門家に業務を委託したりします。万が一訴訟沙汰になった場合には、ソリスタが資料などを準備した上で、バリスタに依頼をして法廷に上げるのです。
私が理想とするのは、行政サービスをフル活用して相談者の夢を実現することであり、もう一つは普段から法律の専門家としてトラブルの芽を早めに摘んでおくことです。まさにソリスタのような役割です。
問題は、トラブルが起こることではなく、トラブルが起きた時の備えをしておかないことにあります。逆にいえば、トラブルが起きても大丈夫だと考えるゆとりが、むしろトラブルを抑止する力となります。
「備えあれば憂いなし」
数ある諺や格言の中で、これほど行政書士の仕事を表現するのにふさわしい言葉はないと思います。
もちろん、世の中のすべての行政書士が、私と同じ考え方をしているとは限りません。行政書士の扱う業務は幅が広いだけに、自分の専門分野に特化している行政書士も多くいます。これは当然であり、そのことに是非があるはずもありません。
そのため行政書士自身も、行政サービスがどれほど充実しているのか、各種行政サービスはどのように使えばよいのかを、網羅的に熟知しているわけではないのが実情と言わざるを得ません。それほど幅広い世界なのです。ですから本書を書いた目的には、行政書士自らに宛てたメッセージの側面もあります。
私は、行政書士は、法制度や行政サービスについての総合窓口、いわばコンシェルジュとしての役割を果たすべきだと考えています。そして、同じ考えをもつ行政書士が一人でも増えることを願っています。
生きづらい世の中だとよく言われますが、そんな社会の中で、多くの人の暮らしを守るのが行政サービスの役目です。これを十分に活用して、一人でも多くの人がよりよい日々を安心して暮らしていただけるようになるなら、これに勝る喜びはありません。
2016年6月
行政書士
【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。