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司法サービスだけでは足りない

たとえば、いまここに、サラ金など多重債務で苦しむ人がいて、その人を救済することを考えましょう。

一般的には、過払い金の返還請求(つまり、法定の制限利息を超えて余計に支払ってしまったお金を支払先から返してもらう請求[1])や自己破産(つまり、借りたお金ぜんぶを返すことはできないので、現にある財産をお金に変えて返済にあてて、それでも払いきれない分は払わなくても良いことにしてもらう手続[2])など、を検討することになるでしょう。これらは、裁判所を活用する手段といえます。

しかしながら、これだけでは救済としては必ずしも十分ではありません。

過払い金はいずれ返還されるとしても、直ちにお金が返ってくるわけではありません。今日の生活費にもこと欠くような場合はこれでは困ります。また、破産手続をするときは、過払い金を返してもらう権利は破産手続のもとに処理され、負債の支払いにあてられますので、お金は返ってきません[3]

破産手続によって支払い義務を免れても(「免責」といいます)、これにより将来の収入が保証されるわけではありません。

また、負債の全てが免責されるわけではなく、基準時以降の負債(新しい借り入れ)は残りますし[4]、税金のように免責されないものもあります[5]

ですから、生活を立て直すためには、

ア.租税公課については、請求額を減らしてもらう「減免」や既に滞納しているものについて支払い義務を先延ばししてもらい場合によっては支払い義務自体が消滅することもある「徴収猶予」・「換価猶予」等を申請する[6]

イ.夜逃げ状態で、定住する場所がないなら、これを確保するため市営住宅の斡旋を受ける[7](自治体によります)

ウ.生活保護の申請をして保護費の給付を受ける

エ.さらに当座の生活費にも事欠くのであれば社会福祉協議会に緊急融資を依頼する[9]

といった手段も検討してみるべきでしょう。

これらは、行政によるサービスです(社会福祉協議会は厳密には行政ではありませんが、市町村の地域行政と密接な関係があります)。

それでも解決できないこともあるでしょう。各手段にはそれぞれの要件があることももちろんです。しかしながら、このように司法制度を背景としつつも各種行政サービスの活用を併用することによって、より実効性のある権利救済・権利実現が可能となるケースは非常に多いと思われます。

ところが、他方で、司法に携わる法律家は行政実務に疎く、また役所の窓口は細分化されているのが現状です。司法サービスに行政サービスを併用したトータルの法的サービスの提供が望まれます。[10]

脚注

  1. [1]利息制限法1条ほか同法各条項,民法703条,704条,最高裁判所大法廷判決昭和39年11月18日民集9巻1868頁,同じく大法廷判決昭和43年11月13日民集12巻2526頁 など
  2. [2]破産法15条1項,30条1項,193条1項,248条1項,253条1項本文 など

【注記】この記事は開発者Tが以前に執筆したコラム・出版準備した書籍原稿からのものです。内容は当時の法令・制度等に基づくものであり、現時点での正確性を保証するものではありません。最新の情報は本AI行政コンパスのチャット画面等でご確認ください。